アンティークの定義「100年」は正しい?

1.アンティーク=100年と言われる理由

アンティーク家具に興味がある方なら、一度は【アンティーク=100年以上前の物】と聞いた事がある方も多いと思います。
それ自体は間違った認識では無いですが、アンティーク家具の買付をする現場で、この基準を使用している人はほぼいません。私も20年以上バイヤーをしていますが、1人も会った事がありません。
むしろ、100年以上昔の物でもジャンク品のようなアイテムはアンティークとは呼ばれていません。

ではなぜ【アンティーク=100年以上前の物】を現場の人は使用しないのか、結論から言うとこの基準は、1930年に制定されたアメリカのスムート・ホーリー関税法で定められた【免税の基準】だからです。

この基準をWTOの加盟国が採用しているため、日本でもこの認識が広まりましたが、これはあくまでもアメリカの「関税」の話なんです。

そして、原文をよく読むと【collections in illustration of the progress of the arts,works in bronze, marble, terra cotta, parian, pottery or porcelain, artistic antiquities, and objects of art of ornamental character or educational value which shall have been produced prior to the year 1830,】と表記されています。
日本語に訳すと【芸術の進歩を示すコレクション、ブロンズ、大理石、テラコッタ、パリアン、陶器または磁器による作品、古美術品、および1830年以前(1930年から遡って100年前)に制作された装飾的または教育的価値のある美術】には関税(輸入時に掛かる税金)を免除するよ、という事が書かれています。

逆に言うと、100年に満たない物は「アンティークではない」とはどこにも書いていないわけで、アンティークの中で100年以上経過した物に対して関税免除と言っているだけですので【アンティーク=100年以上前の物】に拘る必要は全く無いと私個人は感じています。

2.買付現場で使われているアンティークとは

ヨーロッパやヨーロッパの植民地時代が長い東南アジアの地域等では製造から100年に満たない多くの家具もアンティークとして取引されています。

弊社の工場のあるインドネシアも同様で、基準はあくまでも「職人がメンテナンスをして後世に伝えた家具」であるかどうか。
時にはそのままでは使えないジャンク品を職人が直す事でアンティークとして昇華させる事も珍しくありません。

特に1930~50年頃までの家具は1点物で個性的なデザインの物が多く、材料が豊富に使われているため、私たちも積極的に買付しています。

又、アンティークと似たような使われ方にヴィンテージがあります。

ヴィンテージに関しても明確な基準はありませんが、買付の現場ではアンティークより比較的新しく「価値の高い量産家具」を指す事が多いように感じています。

素材に関してもプラスチックや樹脂など工業製品も多く見られ、家具その物のデザインや機能、木材に対する価値に加え「ブランド」の価値がアンティークよりも影響がする事が多く、偽物のブランド品が出回る事もあります。